「転職しようか迷っている」「今の職場にいていいのか分からない」——こうした悩みを相談に来られる人に、私はいつも同じ問いかけをします。「ところで、あなたはどう在りたいですか?」

その時点で、多くの人は言葉に詰まります。なぜなら、現在地の不満には詳しくても、自分がどう在りたいのかについては、深く考えたことがないから。介護・福祉業界で10,000人以上のキャリア相談に携わる中で、この問いを避ける人の多さに気づきました。

9回の転職経験を持つ私が、この記事を通じてお伝えしたいこと——それは、キャリアに迷うことは誰にでもあり、その迷いの先にこそ、本当の選択が始まるということです。

心が揺れるのは、本当は気づいているから

「キャリアに迷っている」という状態は、一見ネガティブに映ります。不安定で、弱い心持ちのように感じる人も多いでしょう。

しかし、本当はその逆です。心が揺れ、迷いが生じるということは、あなたが本当は「今ここではない、別の道があるかもしれない」と気づいているからです。その感覚を無視して、「今の職場が安定しているから」「転職は怖いから」という理由で同じ場所に留まる——それが多くの人の選択です。

✦ 迷いは信号

キャリアに迷うことは、あなたの心が「何かが違う」と発しているサイン。その信号を無視することが、本当の停滞を生み出します。逆に、その迷いと向き合うことが、人生の選び直しへの第一歩になるのです。

転職したい気持ちは、本当は何を意味しているのか

転職を考える人の多くは、「今の職場に満足していない」という理由で判断します。給与が低い、休日が少ない、人間関係が合わない——確かに、これらは転職の理由になります。

しかし、より本質的な問いは、こうです:「その不満の奥にある、本当の望みは何か?」

給与が不満だという人に詳しく聞くと、その背景には「家族を安心させたい」「自分の時間を作りたい」「自分の人生に余裕を持ちたい」という切実な価値観がある。そこから、さらに問いを深掘りすると、「では、あなたにとって『良い人生』とは何か」という根本的な問いに到達します。

転職したいという気持ちは、決して職場への不満だけではなく、自分自身の人生の選択基準の再確認を求めているのです。

逃げではなく、勇気ある再選択

転職を躊躇する理由として、「逃げのような気がする」という言葉をよく聞きます。

これは、根深い思い込みです。「一度入った会社は、簡単に辞めるべきではない」「困難があっても乗り越えるべき」——こうした価値観が、私たちの心に組み込まれています。

しかし、考えてみてください。人生は一度きり。あなたが過ごす1,000時間以上の労働時間、それは誰のものでもなく、あなた自身のものです。その時間を、本当にその職場で過ごしたいのか。その問いに対して「いいえ」と答える勇気——それは逃げではなく、自分の人生に責任を持つ選択なのです。

転職を決めた後、多くの人が口にする言葉があります。「決めるまでは不安でいっぱいでしたが、決めた瞬間、すっきりしました。自分で選べるんだって分かりました」。その言葉の中に、この選択の本質がある。決断は恐れを与えるのではなく、自分の人生を取り戻す瞬間なのです。

「今すぐ辞めろ」ではなく、「自分で選べ」という話

この記事を読む人の中には、「藤原さんは転職を勧めるのか」と考える人もいるかもしれません。その答えは、「いいえ」です。

むしろ、私が伝えたいのは、転職するか留まるか、その選択の過程に意味があるということです。重要なのは「最終的に何を選ぶか」ではなく、「自分の価値観と向き合った上で、主体的に選ぶか」なのです。

その結果、「今の職場で5年働く」と決めることもあるでしょう。その選択も、本当の迷いと向き合った上での決定であれば、それは強い選択になります。一方、「新しい環境に飛び込む」と決めることもあるでしょう。それも同じく、自分の人生に責任を持つ選択なのです。

人生は、何度だって再起動できる

9回の転職を経験して、私が確信したことがあります。人生は、何度だって再起動できるということです。

多くの人は、「この判断を誤ったら人生は終わり」という思い込みを持っています。だから、決断を先延ばしにし、迷いを抱え続ける。しかし、そうではありません。

各段階での失敗は、財産になる

転職先で失敗することもあるでしょう。「こんなはずじゃなかった」と後悔することもあるかもしれません。しかし、その経験が無駄ではなく、次の選択をより確実にする情報になります。9回の転職を通じて、私は何度も失敗し、何度も学びました。その積み重ねが、今の自分を形作っています。

年齢も、経歴も、制限ではなく、物語

「今から転職するには遅い」「経歴に傷がつく」という懸念もあるでしょう。介護・福祉業界は、むしろそうした多様な背景を持った人材の経験を、大きな財産として評価します。なぜなら、複数の環境で学んだ人は、より深い視点で課題を解決できるから。あなたの経歴は、決して「失敗の歴史」ではなく、「学習の物語」なのです。

「自分はどう在りたいのか」を、今、問い直す

キャリアに迷ったときにすべきことは、実は単純です。

焦って転職サイトを開いたり、求人票を眺めたりする前に、一度立ち止まって、自分に問いかけてください。

  • 「私は、本当は何がしたいのか」
  • 「私にとって、良い人生とは何か」
  • 「今、一番欠けていることは何か」
  • 「その欠けていることは、転職で解決するのか、それとも別の方法か」
  • 「5年後、自分はどうなっていたいのか」

この問いに、急いで答える必要はありません。時間をかけて、丁寧に考える。その過程の中で、本当の選択基準が見えてきます。

迷いを抱えたあなたへ

もし今、キャリアについて迷っているのであれば、それは弱さではなく、自分の人生と真摯に向き合っている証拠です。その迷いを大事にしてください。その中にこそ、次のステップへの扉が隠れています。

転職するかしないか、その判断は後でいい。まずは「自分はどう在りたいのか」という問いに、じっくり向き合うこと。その過程を通じて、あなたの人生の選択は、より確実で、より納得のいくものになるのです。

スパークルキャリアでは、そうした自問自答のプロセスを、対話を通じてサポートします。一人では難しい「自分自身の本当の望み」の言語化を、私たちがお手伝いします。