僕が創業したのは、「自分の力を証明したい」という欲望からでした。それだけで突っ走っていた。周囲から「すごい」と言われたい。社会に認められたい。その一心で、起業という道を選びました。

しかし、5年が経つ中で、妻から投げかけられた言葉が、すべてを変えました。それは、「あなたには愛がない」という、シンプルで重い指摘でした。

その言葉をきっかけに、僕は気づきました。「認められたい」という欲望だけで動いていたら、いくら成功しても、本当の意味で人と繋がることはできない。むしろ、仕事も人間関係も、すべてが歪んでいく。

その原点回帰が、スパークルキャリアの理念の中核になっています。「求人票の数字ではなく、その人を見つめる」——この想いは、妻の言葉から生まれたのです。

空回りの日々——頑張っても報われなかった時代

大学時代、僕は「とにかく頑張る」というのを自分のスタイルにしていました。何をするにも全力。失敗を避け、完璧さを求め、結果を出すことだけを目指していた。周りからは「行動力がある」と評価されていましたが、実は、その行動の先には「自分を認めさせたい」という欲望があったのです。

就職してからも変わりませんでした。営業成績を上げること。昇進すること。年収を増やすこと。すべてが「自分のすごさの証明」に見えていました。やっていることは悪くないのかもしれませんが、動機が完全に内向きでした。誰のために?何のために?——そういう問いを、本当の意味では持っていなかったのです。

だから、いくら結果を出しても、心は満たされない。認めてくれない人に対しては、無意識のうちに敵意を持つようになる。高速で動く自分に付いてこられない人を見下すようになる。気づけば、周囲との距離が広がっていました。

そして、起業という決断がそれを加速させました。自分の力を試す舞台として、事業を見ていた。「この業界で、自分は一番を目指す」——そう公言していました。競争心、支配欲、認欲求。そういった感情が、起業の動機の中核にあったのです。

妻が教えてくれた「本当のこと」

起業から3年目の頃、妻と深い話をする機会がありました。時間がない、疲れている、そういった言い訳で、長く向き合う時間を持っていなかった。しかし、その日は違いました。妻が、ついに言ってくれたのです。

「一人でやりたいわけじゃないんでしょ?」

「あなたが欲しいのは、お金でもなければ、立場でもない。結局、『認められたい』それだけなんでしょ?」

言葉になると、その通りでした。自分は「楽しいから事業をしている」と思い込もうとしていましたが、実際には、「自分の力で何かを成し遂げた」という証拠が欲しかったのです。利用者のためという大義名分は後付けで、本音は「自分の功績を世に知らしめたい」——その一点だけでした。

それを指摘された時、自分がいかに一人よがりだったか、ようやく気づき始めました。周囲をコマのように動かそうとしていた。相手の想いなど考えず、自分のビジョン実現のために、人を使おうとしていた。それに気づいた時、自分がどんなに周囲から孤立していたかがわかったのです。

3倍速で生きる人間と等倍の世界

「あなたは、3倍の速度で生きている。でも、世の中はそんなに速くない。みんな等倍で生きている。あなたが突っ走ると、誰も付いてこられない。それなのに、付いてこられない人を見下す。その姿勢は、本当に傲慢だと思う」

その言葉を聞いて、僕は初めて理解しました。「速さ」を美徳だと思っていた。できるだけ早く、できるだけ多くのことを成し遂げる——それが人生の勝者だと信じていたのです。

しかし、チームで仕事をする以上、速さだけでは意味がない。むしろ、チームの速度に合わせ、一人ひとりの想いを汲み取り、一緒に進むことの方が、よっぽど大切なのです。僕が3倍速で走っていた時、チームメンバーは置き去りにされていました。その時の疲弊感、その時に心が折れかけた人も、きっと多くいたはずです。

その気づきから、僕の行動は変わり始めました。意図的に、自分のペースを落とすようにしました。打ち合わせの時間を長く取り、相手の話を最後まで聞く。提案を押し通すのではなく、相手がどう考えているのかを理解する。その時間は、一見するとロスのように見えるかもしれません。でも、結果として、チーム全体の進む方向がより正確になり、エンゲージメントも高まったのです。

「愛がないねん、人に」

そして、妻からの最後の言葉は、最も心に響きました。「あなたには、人に対する愛がない」——この言葉です。

「人を見ていない。相手がどう感じているのか、何を大切にしているのか、そういうことに関心がない。自分がどう評価されるかだけを考えている。その姿勢は、人に対して失礼だと思う」

愛というのは、大げさな言葉かもしれません。しかし、要するに「相手を見つめること」「相手を理解しようとする姿勢」のことなのだと、その時初めて理解しました。

ビジネスにおいても、転職支援においても、僕たちが陥りやすいのは「自分たちのロジック」を押し通すことです。「このキャリアパスが正解」「このスキルを身につけるべき」——そういった一方的な価値判断で、相手を動かそうとする。しかし、それは相手を見ていないのと同じです。

その人が何を大切にしているのか。どう在りたいのか。そこから出発しない限り、本当の意味での支援はできない。妻の言葉は、そのことを教えてくれたのです。

「寄り添う覚悟」が足りなかった

妻の指摘を受けて、僕は自分がいかに自分勝手だったか、改めて考え直すようになりました。起業当初、僕の理想は「自分が社会を変える」というものでした。介護業界に革新をもたらす。そういう大志を持っていたのです。

しかし、本当に大切なのは、「自分が社会を変える」ことではなく、「一人ひとりに寄り添い、その人の人生が良くなるのを見守る」ことなのだと、気づき始めたのです。

求人票の数字だけで転職先を選ぶ人は多いです。年収が高いから、休日が多いから、立地が良いから——そういう理由で職場を決める人です。もちろん、それらの要素は大切です。生活があれば、条件は重要です。

しかし、その人の人生全体を考えた時、本当に大切なのは、「どこで働くのか」よりも「どう働くのか」「誰と働くのか」「何を大切にしながら働くのか」——そういう内面的な要素ではないでしょうか。

その気づきから、スパークルキャリアの支援の形が変わりました。初回の相談では、求人を紹介しない。まず、その人の話を徹底的に聞く。どんな経験をしてきたのか。何に喜びを感じるのか。どんな未来を描きたいのか。その対話を通じて、その人自身の「軸」が見えてくるまで、一緒に考える。

その過程は、一見すると「非効率」に見えるかもしれません。求人マッチングの企業であれば、条件入力して、すぐに求人を返すでしょう。でも、僕たちが大切にしたいのは、その過程そのものなのです。その人が自分自身と向き合う時間。その人が本当に望むことが何かを見つめ直す時間。その時間の中にこそ、本当の支援があると、僕は信じています。

原点は「楽しませたい」だった

妻との対話を通じて、なぜ僕がこの仕事を始めたのかを、改めて思い出しました。実は、大学生の頃、福祉施設でボランティアをしていたのです。利用者さんとの関わりの中で、「この人たちが笑顔になる瞬間を作りたい」という想いを抱いていました。

それが、いつの間にか「自分がこの業界で一番になる」という欲望にすり替わっていたのです。原点は「誰かを楽しませたい」「誰かの人生に寄り添いたい」——その想いだったはずなのに。

その原点に立ち返ることで、初めて、本当の事業のあり方が見えた気がします。「自分たちが提供するサービスで、相手の人生がどう良くなるのか」——その視点です。

転職支援において、それは「条件の良い求人を紹介すること」ではなく、「その人が本当に望む人生を、一緒に描くこと」「その人の可能性を信じること」になったのです。

5年かけて、ようやくわかったこと

創業から5年。僕は随分と変わった気がします。当初の「自分が認められたい」という欲望は、完全になくなったわけではありません。でも、それが人生の中心ではなくなりました。

それに代わり、「相手のために何ができるか」「この人の人生にどう貢献できるか」——その問いが、仕事の中心になりました。

面白いことに、その方向転換は、ビジネス的にも上手くいくようになりました。利用者さんの満足度は高まり、紹介企業からの評価も上がり、結果として事業も成長するようになったのです。つまり、「相手を見つめることが、実は最も強いビジネスモデルなのだ」ということに、ようやく気づいたのです。

妻は、その時の僕に対して、こう言いました。「あなたは土のような人だね。土は、何もしゃしゃり出ない。でも、そこに種を落とすと、温かく、それを育てる。あなたがやっているのは、その人の中に眠っている可能性という種を、温かく育てることなんだと思う」

その言葉が、今でも心に残っています。「自分が一番」「自分が光りたい」という欲望からは、決して生まれない視点です。相手を信じ、相手の可能性を育むことの大切さ——それが、本当の意味での「強さ」なのだと、ようやく理解しました。

あなたへ——頑張っても報われないと感じたら

この文章を読んでいるあなたの中に、「頑張っているのに、報われていない」「努力しているのに、評価されていない」そういった想いを持っている人も多いでしょう。

その想いは、決して間違っていません。事実、頑張っているのだと思います。でも、もしあなたの頑張りが報われていないなら、一度立ち止まって、問い直してほしいことがあります。

「誰のために、その努力をしているのか」

自分が認められたいから?自分の目標を達成したいから?それとも、相手を喜ばせたいから?職場の環境を良くしたいから?

その動機が内向きであれば、どんなに頑張っても、心は満たされないのかもしれません。一方で、その動機が相手のためであれば、評価の形は違うかもしれませんが、本当の意味での充足感が生まれるのだと、僕は信じています。

また、「報われていない」と感じているなら、それは「あなたの頑張りが足りないから」ではなく、「あなたの努力が、正しい場所で活かされていないから」かもしれません。

スパークルキャリアは、そのために存在しています。あなたの頑張りが本当に活かされる場所。あなたの想いが、ちゃんと受け止められる環境。そういう「場所」を、一緒に見つけたいのです。

まとめ

僕が創業した動機は、決して高潔ではありませんでした。「自分が認められたい」——その一点です。その欲望が、実はビジネスにとって、最も危険な要素だということに、5年かけてようやく気づきました。

でも、その失敗の経験があったからこそ、スパークルキャリアの理念が生まれたのだと思うのです。「その人を見つめる」「その人の可能性を信じる」「相手のために寄り添う」——その想いは、妻の言葉がなければ、決して辿り着かなかったものです。

今、介護業界で働くあなたへ。「頑張っているのに、報われていない」そう感じているなら、もしかしたら、あなたが今いる場所が、あなたの努力を正当に評価できない場所なのかもしれません。

僕たちは、そういう人たちのために、存在しています。あなたの努力を見つめ、あなたの想いを理解し、あなたが本当に望む環境を、一緒に見つけていく。その過程そのものが、僕たちの仕事であり、喜びなのです。