東京の美容クリニックで経営企画として活躍していた女性。子どもが1歳9カ月になった今、千葉で育児に専念している。やりがいのあった仕事。やり残したことがある。でも子育てとの両立に不安も抱えている。

画面越しの相談で、私たちが見つけたのは、彼女がまったく気づいていなかった「宝物」だった。

画面越しの「はじめまして」から始まった

お忙しいところ、ありがとうございます——そう言って現れた女性は、明るく、丁寧だった。育休中のいま、これからのキャリアについて考えたいということだった。

スパークルキャリアでは、初回の相談で求人を紹介することはない。まずは聴く。これまでのこと。これからのこと。何に心が動くのか。

「美容業界の経営企画をしていました。でも、シフト制と子どもの保育園の時間が合わなくて。5月に復帰するんですけど、本当に大丈夫かな、って」

その言葉の奥に、複雑な想いが詰まっていることに、すぐに気づいた。

やりがいのある仕事と、子育ての現実

彼女が美容クリニックで担当していたのは、単なる事務職ではなかった。患者さんへのコンサルテーション、施術の提案、その後の経過確認。医療従事者として、一人ひとりの人生に向き合う仕事だった。「施術をして、患者さんの笑顔が生まれる瞬間が好きでした」と、彼女は言う。

その仕事が、彼女にとってどれほど大切だったかは、その後の言葉でよくわかった。

シフト制と保育園の板挟み

でも、その仕事には条件がある。美容クリニックだから、シフト制。土日祝日も営業。保育園の時間は朝8時から夕方6時まで。迎えに来ないと、保育料が増える。

「どうしても、両立が難しくて。仕事と子育てのどちらかを諦めなきゃいけないのかな、って思ってました」

その考え方は、一見すると合理的だ。実際、多くの女性がこの葛藤の中にいる。子どもがいるなら、定時上がりの事務職を選ぶべき。そう考えることは、自然なことかもしれない。

でも、本当にそうだろうか。

「本当は辞めたくない」という正直な気持ち

「美容クリニックの仕事は、本当にやりがいがありました。チームのメンバーとも、患者さんとも、良い関係を築けていたし。正直、仕事を辞めたくない気持ちもあります」

この言葉を聴いたとき、相談の本質が見えた。彼女の悩みは、「仕事か育児か」ではない。「自分の可能性を信じられるかどうか」だったのだ。

彼女は無意識のうちに、「子どもがいると、仕事の質を落とさなければいけない」と思い込んでいた。だから、「定時上がりの、条件の悪い仕事に移る」という選択肢だけを見ていたのだ。

しかし、本当にそれだけなのだろうか。

本人が気づいていない「宝物」

相談を進める中で、彼女の経歴を掘り下げていった。

食品関係の企業で10年。事務職として基礎を固めた。その後、美容クリニックに転職。最初はカウンセリング業務だったが、やがてリーダーシップを任された。5人のチームを率い、売上を伸ばした。

一見すると、珍しくない経歴かもしれない。でも、よく見ると、そこには「積み重ねの力」が隠れていた。

9人兄弟の真ん中が持つ「間を取り持つ力」

「実は、兄弟姉妹が9人なんです。その真ん中で育ったから、気づかないうちに、人の間を取り持つようなことをしてるんだと思います」

9人兄弟の真ん中。その環境で育つということは、他の何にも代えがたい経験を意味する。自分より上の兄姉、自分より下の妹弟。それぞれと関わり、調整し、時には説得する。その繰り返しの中で、他の誰も持っていない「人間関係のセンス」が磨かれていた。

彼女はそれを、自分の「才能」だとは思っていなかった。当たり前のことだと思っていた。でも、それが今、彼女の最大の武器になるはずなのだ。

事務10年×接客×育成——重なり合う経験の価値

食品企業での10年の事務経験。美容クリニックでの接客とコンサルテーション。そして、5人のチームを育成した経験。これらは、バラバラに見えるかもしれない。

でも、本質を見つめると違う。それは、「システムを理解し、人を理解し、その両者をつなぎ合わせる」という、唯一の道のりなのだ。

彼女が持っているのは、単なる「事務スキル」や「接客スキル」ではない。それは、「組織全体を見通す力」「人を動かす力」「複雑な環境を整える力」だ。

その力は、条件の悪い職場では活かせない。むしろ、その力を求める職場こそが、彼女の活躍の場なはずなのだ。

「たとえ一人になっても、子どもを育てていける自立した人間でいたい」

相談の後半で、彼女は静かに、だが力強くこう言った。

「たとえ一人になっても、子どもを育てていける自立した人間でいたい。だから、ちゃんと働きたい。ちゃんと稼ぎたい」

この言葉に、すべてが集約されている。彼女は、「仕事を続けたい」のではなく、「自立でありたい」のだ。子どもを育てる責任を、自分の力で果たしたいのだ。

その想いは、けっして「子どもを二の次にしたい」ということではない。むしろ逆だ。子どもの未来を本当に大事に思っているからこそ、自分が経済的に自立し、精神的に安定していたいのだ。

親が輝いている姿を見せることが、何より子どもへの教育になる——その感覚を、彼女は本能的に持っていた。

願うことは、わがままじゃない

相談を終えて気づくのは、彼女がいかに「自分の願い」に罪悪感を感じていたかということだった。

「子どもがいるのに、仕事をちゃんとしたいなんて」「シフト制の仕事をしたいなんて」「子どもより自分のキャリアを優先しようとしているのでは」——こうした思い込みが、彼女の中に深く根ざしていたのだ。

だが、その前提は間違っている。

子どもがいることと、自分の可能性を信じることは、対立しない。むしろ、自分を信じ、自分の力を活かせる仕事を選ぶことが、長期的には子どもにとっても、社会にとっても、最善の道なのだ。

一人の人間が、やりがいを感じながら働く。その姿は、どの子どもの目にも映る。親が「ありがとう」と言われる。親が結果を出す。親が成長する。それを見ている子どもは、何を学ぶのだろうか。

こうした親たちの想いを、社会がもっと応援できたら——そう思わずにはいられない。

まとめ

育休中の一人の女性との相談から見えるのは、日本社会全体の構造的な課題だ。多くの女性が、「子どもがいたら、この程度の待遇で我慢しなきゃいけない」という思い込みの中で、自分の可能性を制限しているのではないか。

本来なら、彼女の経験値、専門性、人間力は、もっと高い水準の職場で、より良い待遇で、その力を活かす場があるはずなのだ。

スパークルキャリアが目指すのは、こうした「見えない制限」を外すことだ。「子どもがいても、ちゃんと働きたい」「自分の可能性を信じたい」そう願う人たちを、本気で応援したい。

彼女の5月の復帰。その先の3年。その先の人生。すべてが、自分の可能性を信じるというたった一つの選択で、大きく変わるはずなのだ。