スパークルキャリアの創業は、経営計画書から始まりませんでした。ビジネスモデルの完成度で語ることもできない。あったのは、ただ一つの想い——「誰かの人生に、誠実に伴いたい」という想いだけです。

その想いが、どのようにして今のチームになり、文化になり、会社になったのか。多くの起業家は「戦略的に人を配置し、制度を整える」というストーリーを語ります。しかし、私たちの現実はそうではありませんでした。人が集まって、関係が深まって、その過程で空気が醸成される。そして、その空気こそが、すべての根幹なのです。

完璧な構想はなかった

創業当初、私たちには5か年計画もなければ、詳細なマーケット分析もありませんでした。それどころか「3年以内に利益を出す」という数字的な目標さえ、曖昧なものでした。

あったのは、「介護・福祉業界で働く人たちの人生に、真摯に向き合いたい」という想いと、「そのためには、自分たちも本気で取り組むしかない」という覚悟だけ。事業計画として見れば、非常にいびつで脆いものだったと思います。

しかし、逆説的ですが、その不完全さが、後々大きな力になりました。完璧な事業計画があれば、人は「計画を遂行する」ために動きます。でも、不完全な想いだけがあれば、人は「自分たちで何とかしよう」と主体的に動きます。制度に従うのではなく、目の前の課題に創意工夫で立ち向かう。その過程が、組織の文化をつくります。

誘ったのではなく、想いがつないでくれた

スパークルキャリアのメンバーは、募集広告で集めたわけではありません。全員が何らかの人的ネットワークを通じて、この場所にたどり着きました。

初期段階では、昔の仕事仲間から声がかかり、その人の紹介で次の人が加わり、思わぬところで過去の知人と再会し、その人が「一緒にやりませんか」と参加してくれる。そうして、気づけば、共通の想いを持つ7、8人のチームになっていました。

面接で見定めるのではなく、人間関係の中で信頼が生まれ、その信頼が人をつなぐ。採用試験の代わりに、「この人と一緒に働きたい」という直感と確信が、判断基準になっていたのです。

これは偶然ではなく、当然の結果だと今は思います。「制度で人を確保する」のではなく「想いで人をつなぐ」という方針を、無意識のうちに貫いていたから、そうなったのです。

理念はまだなかった。でも体現は始まっていた

多くの企業では、創業時に理念宣言をします。ミッション、ビジョン、バリューズを明文化して、それに沿って行動する。その順序が「正しい」とされています。

しかし、スパークルキャリアはその逆でした。理念は、今もなお、言葉として明確に定義されていません。代わりに、チームの一人ひとりが、日々の中で「自分たちはこうありたい」を体現しています。

「利用者さんの人生に向き合う」という実践の中で、「自分たちも互いの人生に向き合うべきではないか」という気づきが生まれました。「本当のことを言う」「誤魔化さない」「困っていることを堂々と言う」——それらが、最初から決められたルールではなく、チームの関係性の中から自然に生まれたのです。

理念は後付けです。でも、そのおかげで理念は、飾りではなく、血肉になっています。

「本音」がチームをひとつにする

スパークルキャリアの朝礼は、珍しいものです。仕事の報告や予定確認が主ではなく、「最近、心が動いたことはありますか」「家族とのエピソード」「昨日感じた違和感」——そうした人間的な営みの共有が中心です。

朝礼で家族の話をする文化

「子どもの成長」「親の介護」「パートナーとの葛藤」「一人の時間の大切さ」。こうした人生の営みを、朝礼で共有するのです。多くの組織では、こうした話題は「プライベート」として分離されます。しかし、私たちは逆です。プライベートを知ることで、初めてその人のマインドセットが見える。なぜなら、人生のどこかで、仕事と生活は繋がっているからです。

この習慣によって、チームメンバーは単なる「職場の同僚」ではなく、「人生の伴走者」になります。数字や効率では見えない、その人の人間らしさが、朝礼の中で立ち現れるのです。

弱さを共有することで生まれる「居場所」

研修や育成の場でも、「良い事例」だけを語るのではなく、「失敗」「課題」「分からなかったこと」を積極的に共有します。完璧な人間は、組織には不要です。むしろ、自分の弱さを知り、それを言語化できる人ほど、チームの財産になります。

なぜなら、その人の弱さを知ることで、メンバー全員が「自分の弱さを隠さなくていい」と思えるようになるからです。強さと弱さの両方を知られている状態。それが、本当の意味での「信頼」であり、「居場所」です。

介護業界でも、福祉の現場でも、一人ひとりが高いプロフェッショナリズムを求められます。しかし、完璧さを求め続ける組織では、人は燃え尽きます。私たちが大切にしているのは、「困っていることを言える関係」です。そこから、初めて支援が生まれる。それは、利用者さんへの支援も、チーム内の支援も、同じです。

文化から会社は生まれる

「会社は何から生まれるのか」と問われたら、私たちは「制度からではなく、空気から」と答えます。素晴らしい組織図も、完璧な規則も、全員が同じマインドセットでなければ機能しません。むしろ、機能すればするほど、人は窮屈さを感じます。

スパークルキャリアという会社は、「制度より人」「理念より空気」という前提で、毎日を積み重ねています。その積み重ねが、ある時点で「これが私たちの文化だ」という形になるのです。

一番大事な事は、「取り組んでくれるメンバーを信頼すること」「その人の人生全体を見ること」「完璧さよりも本音を優先すること」——この三つが実践できているかどうかです。制度は、その後から自ずとついてくるものだと考えています。

まとめ

スパークルキャリアの創業から今に至るまで、私たちが最も大切にしてきたのは、「目の前の人を見る」ということです。

完璧なビジネス計画ではなく、その時々で湧き上がる想い。採用試験ではなく、信頼の積み重ね。明文化された理念ではなく、朝礼での本音の共有。弱さを隠すことではなく、弱さを知り合うこと。

これらすべてが、「人が人であることを認める」という、非常に シンプルな実践から生まれています。「取り組んでくれる人のことを信頼しよう」「その人の人生全体に目を向けよう」——その二つのシンプルな想いから、私たちの組織は始まり、今も続いています。

制度より人。理念より空気。それが、スパークルキャリアが歩んできた道であり、これからも大切にしたい信念です。